2025年1月15日 16時45分

GameMakerのメリット・デメリット

沼尻和哉
2025年1月15日 16時45分
ゲーム開発を始める際、最初に悩むポイントの一つがゲームエンジンの選択です。もし2Dゲームを作ろうとしているのであればGameMakerという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
GameMakerなら必要十分な機能だけに絞られた設計で、初心者でも始めやすいのが大きな魅力です。2Dゲームの開発に特化したエンジンであり、比較的やさしい学習コストで短期間でも作品を完成させやすいという特徴があります。しかも最初からGameMakerは開発者にフレンドリーなので和解する必要がありません。
実際に『Undertale』や『VA-11 Hall-A』といった人気インディーゲームはGameMakerを用いて開発されました。また、私たちStudio Asahiの作品『ちいさな魔女と失くした記憶』もGameMakerを活用して制作しています。
一方で大規模開発や3Dゲーム制作には不向きとされる部分があるのも事実です。エンジンの得意・不得意を理解しておくことで、自分の作りたいゲームに合った最適な開発環境を選びやすくなるでしょう。
この記事では、GameMakerのメリット・デメリットを解説していきます。

エンジンとしてのメリット・デメリット

メリット
・2Dゲームに特化している
GameMakerは2Dゲームを開発しやすいように設計されています。たとえばルーム(ステージや画面)+オブジェクト+イベントの組み合わせで“動く”ものを短時間で作りやすいのが特徴です。UIも必要最小限の項目に絞られているため画面に慣れるまでの負担が軽く、最初から試行錯誤しやすいのが魅力といえます。

・小~中規模のゲームに最適
個人や少人数チームであれば「まずは動くものを作ってみる」という開発手法が取りやすく、アセット管理やプロトタイプ作成をスムーズに進められます。『ちいさな魔女と失くした記憶』は5名の制作チームで開発を行いました。

デメリット
・大規模・複雑な開発には不向き
アセットや画面数が膨大になるような規模のゲームを作ろうとするとGameMakerの管理機能だけでは開発に問題が生じる可能性があります。たとえばアセットやオブジェクトの情報を一括管理するJSONファイルが衝突しやすく、複数人で同時に作業を行うとコードの競合が起こりやすいです。

・3Dには不向き
GameMakerには最低限の3D機能こそあるものの本格的な3Dゲームを想定した設計ではありません。リアル志向の空間表現や複雑な3Dシェーダーが必要なタイトルを目指すなら3Dゲーム開発に対応したエンジンの方がスムーズに開発を進められるでしょう。

学習面・言語仕様のメリット・デメリット

メリット
・GML(GameMaker Language)がシンプル
GameMakerでは「GML」という独自言語を使います。C++やC#ほど複雑ではないため、比較的少ない学習量でキャラクターの動作や画面遷移などを実装可能です。
ちいさな魔女と失くした記憶』の開発初期にも、「キャラクター移動がすぐに実装できる」「ポイント&クリックのゲームが簡単に作れる」ことに感動していました。エンジニア2名はGameMaker未経験でしたが問題なく開発を進めることができました。

・ドラッグ&ドロップ機能(D&D)が便利
コードを書かずとも命令ブロックを視覚的に組み立てるだけで、ある程度のゲームロジックを構築できる仕組みが備わっています。プログラミングに慣れていない方でも直感的にゲームの流れを掴めるためプロトタイピング時のハードルが下がるメリットがあります。

デメリット
・GMLは他エンジンに流用できない
GameMaker独自の言語であるため、ほかのエンジン(UnityのC#やUnreal EngineのC++)には直接移行できません。将来的に複数のエンジンを触りながらキャリアアップを考える方にとっては学んだスキルを活かしにくいという弱点があります。

・商用レベルの開発ではコード作成が必須
ドラッグ&ドロップ機能だけでは複雑なシステムを実装しきれません。『ちいさな魔女と失くした記憶』はすべてコードで記述してドラッグ&ドロップを使わず制作を進めていました。

開発規模・拡張性のメリット・デメリット

メリット
・小規模プロジェクトにフィットした機能セット
オブジェクト(キャラクターや敵など)+ルーム(ステージや画面)+イベント(トリガー)というベースの構成で2Dゲームならではの機能を一通り実現できます。

・プロトタイピングがしやすい
シンプルにゲーム実装が進められるためゲームのアイデアを素早く検証できます。インディーゲームのように動かしながら改善していく開発スタイルとは相性が良いでしょう。

デメリット
・拡張機能やプラグインが少ない
大手エンジンのように公式のアセットストアが充実しておらず、コミュニティフォーラムや個人サイトを巡る必要があります。しかも古いバージョンのまま更新が止まっているリソースも多く、「アセットストアで購入したのに動かない」という問題が発生しやすい点には注意が必要です。

・アセットマーケットが小規模
高品質な画像・音声・エフェクトを手軽に導入しづらいのも事実です。アート面やサウンド面に力を入れたい場合は自作または外部制作の依頼が必須となり、コストやスケジュール調整が課題になります。

コストとリリース面のメリット・デメリット

メリット
・ライセンス費用が安価
無料版から有料版まで多様なライセンス形態が用意されています。営利目的のゲーム開発でも比較的リーズナブルな費用でリリースをすることができます。売上規模に応じたロイヤリティを気にする必要が少ない点はStudio AsahiでGameMakerを導入する際のメリットでした。

・Steamリリースがしやすい
AchievementやクラウドセーブなどのSteamworks連携の実装では複雑なコードを書く必要がありません。小規模作品ならテスト・デバッグの範囲も小さくて済むためアップデートを繰り返しながら完成度を高める方法も取りやすいでしょう。

デメリット
・大規模展開時のテスト工数が増加
多プラットフォーム対応や長期運用を想定した大型プロジェクトではどのエンジンでもテスト工数が増えがちです。ただしGameMakerは2D小~中規模向けに特化しているぶん、想定外の大規模展開で情報不足やサポート面の制約に直面する可能性があります。

・アセットのバリエーションが限られる
3D要素や特殊なアセットを求めるほど外部委託や自作が増え、負担が大きくなります。アセットの充実を重視する場合はリソース確保やコスト見積もりが重要になるでしょう。

まとめ:こんな方におすすめ

1. 2Dの小~中規模ゲームを素早く完成させたい方
必要十分な機能が揃っているため初心者でもスピーディにプロトタイプを構築しやすいです。
2. 個人や少人数チームの開発者
たとえばエンジニア1名+デザイナー、ライターなどの小規模チームならGameMakerでのゲーム開発をシンプルに進められます。
3. 初めてのゲーム開発に挑戦する方
ドラッグ&ドロップ機能で直感的に操作を覚えつつ最終的にはGMLでのコーディングへ移行する“段階的ステップ”が踏める点が魅力です。

GameMakerは和解する必要がないほど2Dゲーム制作をシンプルに進められるエンジンです。もちろん3D表現や大型プロジェクトを目指すなら別のエンジンを選ぶほうが合理的ですが、小回りの利く2Dゲームを作るという目的がはっきりしているならGameMakerは有力な選択肢になり得るでしょう。

Studio Asahiでは今後もGameMakerを活用してゲーム開発を続けながら、GameMakerやSteamなどに関する情報を発信していく予定です。記事の更新情報は各種SNSやStudio AsahiのDiscordでお知らせしてまいりますので、ぜひフォローや参加をお願いいたします。

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